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マイケル・オクダ氏LCARS 画面のあの独特のデザイン・パネルの製作方法を考案したのは、ハワイ出身の日系 3 世のマイケル・オクダ(Michael Okuda)という人物である。 彼は TNG,DS9,VOY,そしてENTの科学美術スーパーバイザー兼テクニカルコンサルタントで、TNG 以降は映画も含めて彼なしではスタートレックが成立たないほどスタートレックに奉仕している。
これは個人的な事だが、2 人はロサンジェルスにいる共通の友人を通じて知り合ったという。 写真:マイケル・オクダ、デニーズ夫妻スタートレックでの履歴
写真: U.S.S.エンタープライズ A のブリッジ。エンタープライズのコンピュータ画面が、全てオクダグラムで埋まったという記念すべきシーン。 よって、この作品以降これまでの大きくてきらびやかなボタンの“メカニカル・スイッチ”のコンソールから、バックライト式の光沢がある滑らかなタッチ・パネルにとって代わる。 これによりブリッジの雰囲気がこの作品以後、急に未来っぽくなる。 ただし、敵方のクリンゴン艦は旧態依然としたメカニカル・スイッチコンソールを使用しており、本格的に取り入れられたのは次作 「ST V: 新たなる未知」 からである。 オクダ+ダイアグラムスタートレックでのあの独特のスタイル(TNG スタイルと呼ばれている)のグラフィックスは、宇宙艦を非常に使いやすいものにしたいというスタートレックの生みの親、ジーン・ロッデンベリーの要請を受けて、非常に複雑なインフォメーションを極めて明確に編成するという趣旨のもとでデザインされた。 TOSでは操作しているコンソールのアップシーンがほとんどなかったが、TNG 以降ではディスプレイ画面はもとより、パネルを操作している手もとのズームアップシーンが頻繁に見られるようになったのに気付くだろう。 これはディスプレイ画面のアニメーションや図を見せて、番組視聴者にもプレゼンテーションを行っているのである。 なお、LCARS という言葉自体はオクダが考え出したのではなく、TOS(宇宙大作戦)のストーリーコンサルタント、TNG 脚本家のドロシー・フォンタナである。 ※ オクダは以前、マイクロソフト社で数人の友人たちとあるプロジェクトについての非公式な話し合いを持った事があるという。 しかし、そのプロジェクトは OS についてのものではないらしい。(1999年9月28日 "Star Trek CONTINUUM") ※ 本人が参加してのチャットで、 「マイクロソフト社に持ちかけて、スタートレック風のコンピューターをデザインする予定はあるか?」というファンからの問いに、「マイクロソフト社が依頼してきたらすぐに!」という答えだったので期待して待っておこう。 (1999年9月28日 "Star Trek CONTINUUM") ※ なお、オクダ自身はマック使いである。 理由は “簡単に使える” からだそうだ。 ただ、オクダはマックを使っているが、Foundation Imaging 社や Digitial Muse 社などの CG 製作会社では Mac だけじゃなくて Windows NT のマシーンも使っているという。 彼が考え出した番組制作費を上げずにハイテク感を出す操作パネルのこのデザインを、スタッフの間では彼に敬意を表してオクダグラム(Okudagram、通常はOkudagramsと複数形で使用)と呼ばれているが、当の本人はこの呼称を余り使わないそうだ。 オクダ(Okuda) と ダイアグラム(Diagram = 図、図形、図表、図解の意)とを合わせたものだと言われており造語である。 なお、スタートレックでLCARSが好きだと称する者は、同時にオクダグラム好きだということを意味する。つまりLCARS イコール オクダグラムという事なのである。 オクダの仕事彼は一話に出るコンソールのグラフィックアートを準備するのに 3,4 日以上かけることが出来るのは滅多になく、通常だいたい 1 週間位で仕上げるという。 3 日程度かかるようなとても大がかりなものを制作中に、プロデューサーから突然 「このシーンは明日の撮影になった」との電話があり、デザインをシンプルなものにして、なんとか 15 分で仕上げたという逸話も残っている。 スタートレック以外での履歴彼は以下の作品などにクレジットされている。
オクダグラムの製作方法コンソールオクダパネル(オクダグラムを使ったパネル)は、元々コストをなるべく抑えて製作が容易なようにと考え出したモノなので、その仕組み自体は非常に簡単である。
初期の TNG(1987年当時)のパネルは、Adobe Illustrator 等を使って黒を背景に白で描き、スライドフィルムに転写して、そのフィルムをトライポリマー・コーティングされた透明アルミニウム、などではなく、現実にはプレキシガラスと呼ばれるモノに張り付けて、舞台用の様々な色の照明フィルター(ジェルとして知られる)で透明部分を埋められて作られていた。 それをセットにはめ込んで、簡単な構成のバックライトで背後から照らされてくっきりと浮かび上がらせている。
プレキシガラス※ プレキシガラス、またはプレキシグラス: ガラスとあるが、実際はケイ砂・炭酸ソーダ・炭酸石灰などを高温で溶融し冷却して作るという、一般的に目にするいわゆる ガラスではなく、アクリル樹脂のことである。 第 2 次世界大戦の頃に、航空機の風防用に曲面加工できる透明素材が必要になり、ガラスに変わる透明プラスチックが注目されるが、そのなかのひとつに 「ポリメタクリル酸メチル」 という樹脂がある。 プレキシガラスというのは、Rohm & Haas 社の製造したその樹脂の商品名である。 ディスプレイ
さらにSupermac's Pixel Paint(グラフィック部)、Paracomp's Swivel 3D(3Dグラフィック部)のようなソフトウェアを駆使し、より臨場感のあるアニメーションが作られている。
TNG では予算が限られていて本物のディスプレイ装置をセットに置けなく、これらをデジタル合成していたが、後の DS9 や VOY では予算も増えて “本物の” ビデオモニターやコンピュータ・ディスプレイを使えるようになった。 TNG以降のシリーズではモニターをセットに埋め込み、直接アニメーションを表示するのがスタンダードになった。 これによって U.S.S.エンタープライズ D の時とは違い、DS9 での司令室や VOY でのヴォイジャーのブリッジのように背景のディスプレイ表示をダイナミックに変更する事が出来るようになり、より一層現実味が増して臨場感あふれる感じになっている。 普通こういった “本物の” ディスプレイ装置を撮影すると、走査線が見えて安っぽく見えるものだが、特殊な撮影方法でそれを回避している。(TV画面上では走査線は全く見えないが、スチール写真などでは見事に走査線が見えているので、やっぱり存在するのだ!)
TNG 当初、バックライト点灯式のこれらパネルの中で、アニメーション部分だけは後に編集段階で合成するという、いわゆるハメコミ合成であった。 しかし、TNG初の劇場版では全てのステーションにU.S.S.ヴォイジャーのように本物のモニターが埋め込まれている。 この映画でようやくTNG放映開始以来の悲願が願った形となる。 文字についてLCARS 画面のあの独特の縦に細長い文字は、Helvetica Ultra Compressedというフォントを使用している(有志によりLCARSフォントとしてネットに公開されている場合が見られるが、元はHelvetica Ultra Compressedに変わりないモノ)。 ちなみに、TOS(宇宙大作戦)ではCorporate Condensed、TOS(宇宙大作戦)の映画では、Eurostyle Bold Extendedというフォントをそれぞれ使用している。 実はボタン上の文字と表示の多くが、スタートレックの制作スタッフや出演俳優のイニシャル、ジョークで色々飾られている。例えば、小さいタッチ・ボタン上には "XXX-XX"という決まったパターンが見られるのだが、それは、「RK BER」(RicK BERman)、「PT STW」(PaTrick STeWart)、「JN FRK」(JoNathan FRaKes)、「GT MCF」(GaTes MCFadden)、「MR SRT」(MaRina SiRTis)、「SS WCT」「LV BRT」(LeVer BuRTon)、「BN SPN」(BreNt SPiNer)、「MK DRN」(Michel DoRn)という風になっている。しかし、それはテレビ画面では小さすぎてよく判らない。 ディスプレイを注意深く見ていると "3069" "239" "456" 等という番号も頻繁に出てくるが、それは別に特別な意味はなくただそのグラフィック要素が使い回しであるという事を証明するというだけだ。 バックライト・パネルなお、このバックライト点灯式のパネル自体は実は昔から巷でも結構見掛けるものである。例えばファーストフード店や某弁当店に入ってレジの前で注文する時、上を見上げれば目に入るはずだ。 そう、強化プラスティックに種類や値段が書いてありバックライト(蛍光灯)でくっきり見えるようにしているあのメニュー看板である。 最近はアチコチにこのバックライト点灯式の展示パネルが使われているので、あえて懸命に探さなくとも容易に目にする事が出来るだだろう。最近はこれを使ったインテリアなども目にする事が出来る。 この方式のパネルに目を付けて、それをタッチ・パネル式のコンソールとしてするという事を思いついたオクダの着眼点は凄いと言えよう。 オクダグラムの効用オクダが開発したこのバックライト点灯式タッチパネルコンソールというのは、スタートレックで使われ始めてからというもの、スタートレック以外でも映画や TV で見るようになった。 この方式のパネルは、“メカニカル・スイッチ” のモノよりはるかに未来的で、周りが薄暗い時には美しさがより一層引き立つ。 ST以外でのバックライト点灯パネル
写真: 映画 『ロスト・イン・スペース』 より。 ジュピター 2 号の操縦席にある操作パネル。 なお、スタートレック以外の作品にこの方式のパネルが使われているのは、オクダ自身は関知していないらしい。 ※ 日本の特撮 「ウルトラマン ダイナ」 に登場する基地の司令室に、LCARS オクダグラムそっくりの画面表示が見られた。 もっともこの番組、サウンド・エフェクト等もスタートレックからの流用が多く見られる。 ※ 日本のアニメ 「機動戦艦ナデシコ」 に登場する宇宙船の操作コンソールは、オクダグラムそのままであった(ちなみに登場するコンピュータ・システムを “思兼(おもいかね”と呼ぶらしい)。 このアニメはスタートレックをモデルにしていると製作者側も公言している(例えば艦番号が 「ND-001」 、後継艦の名前のつけ方が 「ナデシコ B、C」、スタートレックのキャラクター設定をモデルとしていたり、等々。 異星人のオクダグラム
写真: TNG第6シーズン第148話「時空歪曲地帯」より
写真: DS9第1シーズン第5話「恐怖のウィルス」より
写真: VOY第4シーズン第109,110話「ボーグ暗黒フロンティア計画」より
写真: VOY第4シーズン第76,77話「時空侵略戦争」より
写真: DS9第5シーズン第118話「愛の値段」より
写真: DS9第6シーズン第127話「過去を越えた絆」より TV 画面上ではこの独特のデザインとバックライト・点灯式パネルはとても見栄えがよくスッキリしているので、ほんとうに未来のコンピュータのように感じさせてくれる。 今まで観てきた数々の SF 作品の中の宇宙船では、コンピュータ・ディスプレイやコンピュータへの指示は、現代とたいして変わらないブラウン管、普通のキーボードというのを当然の事だと思って観てきた。 しかし、一度スタートレックの世界のこの洗練されたコンピュータ・ディスプレイやタッチ・パネルを観てしまうと、以後もうこのような SF 作品はそれだけで古臭く違和感を覚えるようになってしまうのは否めない。 それくらいこのバックライト点灯式タッチパネルという構造は、人にインパクトを与え印象に残るのだ。 種族と色と文字よく異種族のコンピュータ画面が登場し、その種族独特の文字が表示されることがあるが、これらもマイケル・オクダ氏がデザインしたものである。 ここで、その種族のコンピュータ画面のデザインと独特の異種族文字を並べて比べてみよう。
これらとても練られた異種族の文字が、オクダグラムと共に絶妙のバランスでコンピュータ画面等に表示されると、本当にその種族が存在しているような錯覚さえ覚えるのである。 ここまでフォントのデザインを練られたドラマが他にあるだろうか。 ※ なお、これらスタートレックに登場する異星人のフォント(Windows 用)は、全て Tommy of Escondido's Alien Fonts Page の StarTrek Font Section で手に入れることが出来る。 えっ?それってローマ字じゃん・・・ただし、例え異種族と言えども、画面上いきなりアラビア数字や英文字、つまり普通の地球の文字が現れる場合がある。 しかし、そこは TV ドラマのこと。 異星人の奇妙で複雑なオクダグラムでも、視聴者にはストーリー上、数字など状況をハッキリ判るようにしないといけない。 この部分まで異星人の数字や文字にしてしまったら、我々は本当に訳が判らなくなってしまうだろう。 以下に例を上げる。
不思議な事にソーナ人は、地球のローマ数字をごく一般に使っているようである。 コンピュータパネルにはローマ数字だらけで、我々にはとても判り易い。(「ST IX: 叛乱」) これらをオクダ氏によるオクダグラムの簡略化(当サイトでは)と呼ぶ。 現実のコントロールパネルスペースシャトル
これはなぜかというと、宇宙服を着たゴワゴワの手袋でも難なく操作でき、また、誤操作を防ぐ為に確実にスイッチを ON・OFF を明確に操作出来るようにという設計からである。 確実に操作が行われないと、それが直接命に関わるからだ。 ところが、 それはいささか古い情報だった。 現時点でスペースシャトルは退役が決まっているが、さすがにコクピットは初期設計のままではなく、バージョンアップされていた。当分の間は現実の宇宙船にタッチ・パネル式のコンソールが設置されることは無いであろうと思われたが、意外にも現実にはそうではなかったのだ。
従来はモノクロのディスプレイが 3 つあるだけだったのが、アトランティス号から複合機能電子ディスプレイサブシステム(MEDS:Multifunction Electronic Display Subsystem)というモノが装備されるようになり、多重バックアップされた 11 個のフルカラー・ディスプレイに置き換わったという。 従来のアナログ式の計器盤ではなく、このようなブラウン管や液晶ディスプレイを用いた計器パネルがある操縦席のことをグラス・コクピット(Glass Cockpit)と呼ぶ。 ボーイング 747 以降の民間旅客機や軍用機にも使われている。 LCARS のように一画面に一情報を表示し、複数のディスプレイを並べて一望に出来るというのは、現実でも大変理にかなっているのだ。 メカニカル・スイッチのパーツとそれ一つ一つの配線の重量を考えると、ディスプレイとタッチ・パネル式の方が機体重量が減らせて、コストも減らすことが出来るというメリットがある。 実際、スペースシャトルのグラス・コクピット採用で、従来よりも 75 ポンド(約34 キログラム)の軽量化を果たしているそうだ。 元々は米マクダネル・ダグラス社が提唱した概念だが、それを可能にしたのは何を隠そう日本の液晶技術のおかげだったりするのである。 どうだろう?ディスプレイが複数並ぶこのコクピットを見ると、スタートレックの第 5 シリーズ 「ENTERPRISE」 の 22 世紀のエンタープライズ NX-01 を思い起こさせ、なんだかワクワクしてこないだろうか? 航空機マニアな人にはこのようなのはすでにご存知のことだろう。 これは SF でもなんでもなく、スペースシャトルに搭載されている現実のシステムである。 スペースシャトルは残念ながら2010年に運用が停止されるが、次世代機であるであるアレスやオリオンの場合どうなるか楽しみである。 グラス・コクピット マルチメディアギャラリースペースシャトルの(全て NASA 提供) :
参考 URL:
問題点ただオクダグラムは若干単純化しすぎであり、実際のタッチ・パネル式コンソールのレイアウトは、もう少し人間工学的に練られたモノになるだろう。
写真: E 型エンタープライズのジョイスティック。今までタッチパネルしか存在しなかったのに、突然これが現れたときは驚いた。(「ST IX: 叛乱」) 3 次元で動く乗り物の微妙なコントロールを、あの平面のタッチパネルで操作するのは人間の感覚になじまない。 おそらく、コンピュータがパイロットの次の操作を予測して、ある程度先に先にと動きを補足していかないとあの機動はムリだと思う。 なので、それが実現されるまでは、ジョイスティックのような操縦装置は当分は消えないかと思われる。 ユニバーサルデザイン?宇宙艦隊の士官は、例え初めて出会った種族のコンピュータでも難なく操作している。 当然文字も操作体系も全く違うハズなのに、迷うどころか文字を読んで正しいパネル操作で危機を脱したりもする。 ここら辺が見ていて非常に不思議に思うのだが、ある程度科学が進んだ種族のコンピュータというのは、どれも現在の OS のようにそんなに複雑ではなく、操作体系も工学的にある程度共通になっており、インターフェイスを気にしないでもいいようになっているのかもしれない。 オクダグラムはまさにユニバーサルデザインと言える。 宇宙へ飛んだオクダデザイン
ENT では現代的なユニフォームに左のようなパッチが貼り付けられていたが、現実の世界でも NASA のミッションロゴのいくつかをオクダ氏がデザインしている。 Graphic Design by Mike Okuda. STS-125 ミッション
Graphic Design by Mike Okuda.
EXPLORATION SYTEMS MISSION DIRECTORATE.
下画像。 左からスペースシャトルの代替宇宙船として開発が進められているオリオン宇宙船のロゴ、同じくスペースシャトルの代替のアレス I, V ロケットのロゴ、月面着陸機アルタイルのロゴ、およびこれらを実現化するコンステレーション計画のロゴ。 Graphic Design by Mike Okuda. etc.その他にもこれらのデザインも担当しているようである。 Graphic Design by Mike Okuda. |
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